{霧の中の恋人}
「SALE品 3980円」
久木さんは私の腕をパッと離し、繰り返した。
「3980え……
あーーー!」
タグがつけっぱなし!
買ってから一度も着ていない服だったから!
「久木さん!切ってください!」
久木さんは「まったく…君は騒々しい」とブツブツ言いながら、ハサミで切ってくれた。
このまま出掛けなくてよかった~!
「久木さん!ありがとうございます!
行ってきます!」
返ってきた返事は、『行ってらっしゃい』ではなく、
「ハァ、やっと静かになった…」
だった。