{霧の中の恋人}
「わぁ!遊園地なんてすごく久しぶり!」
思わず駆け出す私の後ろを大ちゃんが着いてくる。
「あんまり走ると転ぶぞ。足元ちゃんと見ろよ」
子供をたしなめるような大ちゃんの言い方に、ムッと顔をしかめる。
「もうっ!いつまで経っても子供扱いするんだから!」
「はいはい。
ほら、何から乗るんだ?パンフレットもらってきたぞ」
大ちゃんがポケットからパンフレットを取り出す前に即答する。
「アレ!あれに乗りたい!」
私が指さす方向の先には、半月型のレーンがあり、物凄いスピードで乗り物がレーンを登ったり下ったりしている。
絶叫マシーンの名の通り、人々の絶叫する声が辺りに響き渡っている。
今年の春に新しくできたアトラクションで、ここに来たら必ず乗ろうと思っていた。
大ちゃんは「言うと思った」と、苦笑いを浮かべた。