{霧の中の恋人}
結局、初デートはこんな感じで終わった。
遊園地の帰り、並木道を並んで歩く。
クリスマスが近づいているこの時期、木々にイルミネーションの電飾が施してあり、光の道が続いている。
…あーあ、初デート
何だかうまくいかなかったなぁ…。
大ちゃん、呆れていないといいけど…。
隣を歩く大ちゃんが、こちらを振り向いた。
「瑞希、家まで送るよ。
そういえば住所どころか、最寄駅すら聞いてなかったよな。
どこの駅に行けばいいんだ?」
背中に、ヒヤリと冷たいものが走った。
大ちゃんには親戚の家に引っ越したと言ってある。
見知らぬ男性と2人暮らしをするなんて言えなくて、咄嗟についたウソだった。
今さら、本当を言うことなんて出来ない。
「だ、大ちゃん!いいよいいよ!
すごく遠いから悪いよ!」
「いや、ちょうどいい機会だから、お世話になってる瑞希の親戚にも挨拶したい。
付き合うことになったからには、キチンと報告もしないとな」
さすが大ちゃん…
やっぱり、そういう誠実なところ好きだな…
って、いやいや。
今はうっとりと大ちゃんに惚れ直している場合でもなくて…
「ううん、親戚の人はもう寝てると思うからっ!
みんな寝るの早い人たちなの!」
「そうか…夜遅くに訪ねたら悪いよな」
申し訳なさそうな大ちゃんの顔をみて、チクリと罪悪感を感じる。
「だから、今日は1人で帰るね!」
「いや、危ないから送ってく」
有無を言わせぬような、ハッキリとした口調にますます困惑した。
どうすればいいの!?
この絶体絶命のピンチをどう切り抜ければ───…