{霧の中の恋人}
「で、ウチに来たわけね」
テーブルを挟んで、真向かいに座る泉が呆れたように溜め息をついた。
「うん…だってこうするしか思いつかなくて…」
あの後、私はまた咄嗟にウソをついた。
今日は初デートの報告をする為に、泉の家に泊まることになっている…と。
それで泉の家まで送ってもらった訳だけど、やっぱり罪悪感が拭いきれない。
「突然押し掛けてごめんねっ!」
「いや、1人暮らしだから私は全然構わないけどね…
やっぱり嘘をつき続けるのは無理があると思うよ。
こんな嘘、いつまでも続くわけないよ」
少しキツイ口調で、泉は言った。
「そう、だよね…。
大ちゃんおかしく思ったかな?」
「そりゃ怪しむでしょ。
突然引っ越すことになるわ、引っ越し先の住所も言わないじゃ不思議に思うでしょ」
キッチンからお湯が沸騰する音が聞こえて、泉は席を立った。
「やっぱり…大ちゃんを騙すような真似して、私…最低だよね…」
大ちゃんは私の気持ちに、真っすぐ応えてくれた。
そんな人に、いくら何もないとは言え、男性と2人で暮らしているなんてこと黙っているなんて、いいはずがない。