{霧の中の恋人}
「瑞希、あんま思いつめるのも良くないよ?
瑞希が望んで同居したわけじゃないんだし…」
泉は温かいココアを私の前に出してくれた。
「でもね…」
ココアを一口啜ってから、泉は言葉を続ける。
「これからずっと大地くんと関係を続けていきたいなら、あの家を出るべきだと思う。
住むところがないんならウチに来てもいいんだよ?
一つ部屋が余ってるんだし、家賃も半分にすれば負担も少ないでしょ?」
あの家を出る…
久木さんとの同居を止めて、泉と暮らす…
泉の言うことは最もだし、そうするべきだということは分かってる。
敷金、礼金もかからないし、家賃も半分ならすぐにでも引っ越すことはできる。
でも私は、
泉の申し出に、頷くことが出来なかった────…。
─────
───────…