{霧の中の恋人}
いつも無表情だけど、いつもとは違う。
久木さんは怒っている。
それも超絶に。
光を宿していない真っ黒の瞳に吸い込まれそうになる。
「うわぁ、まじ怒り?」
不知火さんは、バツが悪そうに頭を掻いている。
「洋平、なにベラベラ余計なことを言ってるんだ?」
「いや~、瑞希ちゃんがさ、最近お前の様子がおかしいって心配しているみたいだから…」
友達の不知火さんも、久木さんのあまりの迫力にたじろいでいるみたいだ。
「俺の様子がおかしかろうが、そいつには関係ないことだ」
ズキンッ───…
遮断された気がした。
もうこれ以上は入ってくるなと…。