{霧の中の恋人}


次の日──


夕方からバイトに来た私は、先ほどから忙しなく動いていた。


出勤した頃はお客さんが少なくて、涼子さんと雑談したり、お客さんからもらったというお土産のおまんじゅうを摘まんだりしていた。


あまりに暇なので、涼子さんが夕飯の買い物に出かけることになり、涼子さんを見送って1人になった途端にお客さんが次から次へと来店し始めた。


それも、花束やアレンジメントの制作など手を加えなければならない注文が殺到したのだ。


通常販売のお客さんを捌きつつ、その傍らにギフトの作成をこなさなければならない為、思うように作業が進まない。


バタバタとお店を行ったり来たり。

てんやわんや。



「すみません、花束3000円分をお願いしたいんですけど」


まただ。

どうしてこうも続くのだろう…。



「はい!どういった感じがよろしいですか?」


「送別会の花束なので、華やかな感じがいいですけど…」


「かしこまりました。
ただ、ちょっと今は混雑している為、すこしお時間を頂くことになりますが…」


「構いません。6時に間に合えばいいので、その頃また受け取りに来ます」



よかった。

6時ならまだ時間がたっぷりある。


ほっと肩を撫で下した。



溜まってしまった注文票を見直すと、ちょうど今5件分の注文が入っている。


次の注文は、子供のピアノの発表会に渡すミニブーケ2000円分…。


小さい子供に渡すなら、可愛らしい感じがいいよね。


濃いピンクのガーベラと、かすみ草、白にピンクの縁取りが入ったスプレーカーネーション、それに赤いミニバラを合わせることにした。


ラッピングはピンク色のチェック柄のペーパーに、赤いリボンをつけた。



「あの、アレンジメントをお願いできますか?」


一つ完成した傍から、またすぐに注文が入る。


あー、もう!
どうして1人になった途端に忙しくなるの!?


誰か助けて!!




「瑞希さん、ここは僕が受けるから、瑞希さんはそのまま制作に入って」



学校から帰ってきたばかりの、制服姿の俊介くんが現れた。


救世主!!




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