{霧の中の恋人}
「はぁ~、やっと終わった…」
注文分の制作をすべて作り終わり、やっと一息落ち着いた。
「じゃあ、僕着替えてくるから」
制服のまま手伝ってくれた俊介くんがカバンを持って、店の奥に入っていった。
「俊介くん、ありがとね。
助かっちゃった」
俊介くんが帰ってきてくれなかったらどうなっていた事か。
さすが花屋の息子だけあり、彼は花束もアレンジメントも作るのが上手くて早い。
2人で手分けして作ったから、どうにか注文をすべて時間通りに作り終えることが出来た。
嵐のような時間が過ぎ去り、店内はひっちゃかめっちゃか。
お店の中を掃除していると、またお客さんが来店した。
「あの、このニオイザクラという花は、いつの時期に咲くものなんですか?」
お客さんが手に持っている花。
ニオイザクラ
優しいピンク色の花を咲かせ、甘い香りを漂わす桜のような花だ。
「えっと…」
しまった…。
ド忘れしちゃった…。
慌てて花図鑑を開き、ニオイザクラを調べる。
「大体11月~1月に花を咲かせます。
ですので、温かい室内に置いて頂ければ、すぐにも蕾を開かせてくれると思いますよ。
寒さには弱いので、注意してくださいね」
「じゃあ、これ下さい」
お会計を済ませ、袋にお花をいれて手渡す。
「ありがとうございました」