{霧の中の恋人}
私は足音で目が覚めた。
寝ちゃったんだ……。
どうやらあの後、眠ってしまったらしい。
泣き疲れて眠っちゃうなんて、子供か。
泣きすぎたせいで、頭に鈍い痛みを感じる。
「目が覚めたか」
背後からかけられた声にビックリする。
そうだ。
久木さんがいたんだった!
泣いている姿を見られて、寝顔まで見られていたなんて!
恥ずかしすぎる!!
久木さんの顔が見られず、俯いたまま謝罪する。
「…すみませんでした。突然泣いてしまって…」
「別に謝る必要はない」
私の謝罪の言葉をバッサリと切るような、冷たい言い方だったけど、私の目が覚めるまでいてくれたんだ…。
時計を確認すると1時間ほど経っていた。
1時間もの間、ずっと私を待っていてくれた?
目が覚めても寂しくないように?
もしかして意外といい人なのかも…。