{霧の中の恋人}
「…その、久木さんはお母さんとどういう知り合いだったんですか?」
お母さんが最後の手紙を託すということは、相当親密な仲だったのだろう。
もしや恋人!?
それにしては若すぎるような…。
どう見たって、私とあまり年が離れているようには見えない。
せいぜい23、4といったところだろう。
「…君が知る必要のないことだ」
…やっぱり言えないような仲なんだ。
そんな存在の人がいたなんて、まったく知らなかった。
だとしたら、きっとこの人もお母さんが亡くなって悲しんでいるに違いない。
でも…
とても恋人を亡くした風には見えないけど……。
無表情だし。淡々としているし。
今まで知らされていなかったお母さんの恋人か否か計りかねているとき、玄関のチャイムが鳴った。