{霧の中の恋人}
「あー、可笑しかった」
一通り笑い終わった久木さんが満足そうに言った。
「あー、そうですか。
それは良かったですね!」
まったく…
いつもはあんなに無表情なのに、ヘラヘラしちゃって!
酔っ払い!!
久木さんは笑い上戸だったのね!
「まー、そう怒るな。
ほら、君も付き合えよ」
久木さんは冷蔵庫からカクテルの缶をとり出し、それを私の目の前でちらつかせた。
うっ、
さっきから緊張で喉が渇いていたし、お風呂上がりでますます水分が欲しいところだ。
ピーチストロベリーのカクテルか…。
美味しそうだな…。
ゴクリッ───
何だか悔しいけど、目の前の誘惑に勝てなくて缶に手を伸ばした。
「この前みたいにはなるなよ」
「なりません!!」
一言余計よ!!