{霧の中の恋人}
水の音が聞こえる…。
ここはどこ?
辺りをキョロキョロと見渡してみた。
小さな滝が流れ、蓮の花が浮いている小さな泉。
目の前を通り過ぎていくキレイな色の蝶。
そして、足元はたくさんのシランの花。
あ、ここ植物園の”泉の広場”だ…。
”この広場には、妖精が住んでいるんじゃよ”
突然聞こえた声に驚いて、後ろを振り向いた。
目じりをさげ、穏やかな笑みを浮かべているおばあさんがいた。
この人は、植物園の売店のおばあさんだ…。
久木さんが頭痛をおこした時、ミネラルウォーターを買いに訪れた売店にいたおばあさん。
若い人が植物園に来るなんて珍しいね。
何か面白いものでも見つけられたかい?
って話しかけられて、泉の広場がステキでしたって答えた。
そしたら、おばあさんは驚いたように目を見開いて、嬉しそうに微笑んだんだ。
その時、おばあさんに聞いた話だ。