{霧の中の恋人}


”あの広場によく辿り着いたね。
皆、あの広場の存在に気付かずに素通りしてしまうんだよ”



『えっと、水の音が聞こえて。
その音に誘われるように、あの広場に辿り着いたんです』


”そうかい、そうかい。
きっと、泉の広場に住む妖精に呼ばれたんじゃろうな”


『妖精…ですか?』


”そうだよ。
あの泉には伝説があってね。
泉の広場を訪れたカップルは、永遠に結ばれるという言い伝えがあるんじゃよ。
私も昔、おじいさんと行ったことがあるよ”


『違います!
カップルなんかじゃありません!』


”そうなのかい?
でもずいぶん男前じゃないかい?
若いころのおじいさんによく似てる”


『でも、久木さんと私はそんなんじゃないですよ!』


”でも、あの泉に2人で辿り着いたという事は、妖精に呼ばれた証拠。
愛の妖精と呼ばれていてね、結ばれるべき男女を巡り合わせるという伝説があるんじゃよ”


『そんな訳ありません!』



だって、


だって私には、大ちゃんが………







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