{霧の中の恋人}


”シランは義務で、仕方なくあなたを引き取ったの”


頭から離れない言葉。


京香さんは、久木さんのことをすべて知っているのだろうか。


色香漂う、大人の女性。

そして、どことなく久木さんと同じ雰囲気を醸し出した人───。


寄り添うようにしてエレベーターに消えた2人の姿が、頭からこびり付いて離れない。


お似合いだった…。

私の知らない久木さんを見た気がした。



私と一定の距離を置こうとしている久木さん。


それが何故かとても寂しくて、


私の知らない久木さんを知っている京香さんの存在が、とても悔しい。



久木さんにとって、京香さんは、どういう存在なんだろう…。


少なくとも、京香さんは久木さんに恋愛感情を抱いていることは間違いなさそうだった。




…恋人…

なのだろうか……




─────
───────…




< 255 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop