{霧の中の恋人}
「…は?どういうことですか?どこってココに…」
「この家の退去手続きはもう済ませてある。
一週間後にはもうここに住めない」
……ハァ!!?
「何よそれ!!何勝手なことを!」
思わず洗面所から飛び出そうとして、手をとめる。
まだピエロ状態のままだ。
この顔をこれ以上、晒すわけにはいかない。
「分かったなら失礼する」
「ちょっと待ってください!!」
私の訴えは、玄関のドアが閉められる音によって遮られた。
前言撤回!!
一瞬でもいい人かもなんて思った私がバカだった!
やっぱりあの人は、失礼極まりない、怪しい男!!
お母さんは、なんでこんな人と付き合っていたのよ!
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