{霧の中の恋人}
一週間で荷物をまとめるなんて出来るのだろうか。
大学をまた暫く休んでやらないと間に合わないな。
それに、大ちゃんにも引っ越すこと言わないと…。
昔からお世話になっていたのだから、大ちゃんの家にも挨拶にいかなくちゃ。
そういえば。
今日の大ちゃん、何か様子がおかしかった。
いつも通りに話していたけど、私には分かる。
何となくだけど、別れ際に見せた笑顔がいつもと違っていたように思う。
ちょっと切なさが混じったような笑顔。
「………」
私は起き上がり、携帯電話をカバンから取り出した。
知らせるなら早いほうがいい。
それに大ちゃんの様子も気になるし。
作業も進まないことだし、今日中に挨拶に行こう。
メモリから大ちゃんの電話番号を呼び出し、通話ボタンを押した。
「大ちゃん?今から家に行ってもいい?
大事な話があるの……」
引越しの話…
大ちゃんは何て言うだろうか…。