{霧の中の恋人}
大ちゃんの家でご飯を頂くのは久しぶりだった。
会社から帰ってきたおじさんもいる。
「瑞希ちゃん、よく来たね。
瑞希ちゃんが来るとわかっていたら、帰りにケーキでも買ってきたんだがなぁ」
「あら。普段はケーキなんて買ってきたりしないのに」
「父さん。ホント、瑞希には甘いよなぁ」
「当たり前だ。
息子に甘かったら逆に気持ち悪いだろ」
「あはは」
女の子がいない大ちゃんの家。
昔から私を、本当の娘のように可愛がってくれた。
「瑞希ちゃん!おじさんと後でゲームやろう。
今、あれにハマってるんだ。
身体を動かしてテニスとかゴルフをやるやつ。
アレは何ていったかなぁ…」
「WIIだろ」
大ちゃんがツッコミをいれる。
「そうだ、それだ。
大地はなぁ、中々相手にしてくれないし、たまに相手をしてくれても容赦がない」
おじさんが苦い顔をする。
「父さんが弱すぎるからだろ」
大ちゃんは呆れた顔をして、エビフライを口に入れた。
「瑞希ちゃん。
あとでフルーツ切ってあげるからね。
今日、お隣からマンゴーを頂いたのよ」
おばさんが嬉しそうに言った。
「ありがとうございます」
相変わらず、大ちゃん家は暖かい。
この家にもあまり来れなくなっちゃうんだな…。
あまりの暖かさに、寂しさが胸を過ぎる。