{霧の中の恋人}
「瑞希!行ったぞ!」
「うん!」
「キャー!お父さん来たわよ!」
「母さん打ち返せ!」
ご飯を食べた後、4人でテニスゲームをした。
大ちゃんと私。
おじさんとおばさん。
ダブルスを組んで試合形式。
今のところ、大ちゃんと私のペアが連勝中だ。
サービスポイント。
おばさんが打ち返した球を、大ちゃんのスマッシュが決まって、また勝利が決まった。
「大地…。
お前は、年上を立てるということを知らんのか。まったく。
親の顔を見てみたいもんだ」
大ちゃんのスマッシュを取り損ねたおじさんが、いじけるように言った。
床にドカッと胡坐をかいて、タバコに火を点ける。
「鏡、持ってこようか?」
大ちゃんがからかうように言うと、おじさんは益々いじけて、プイッとそっぽを向いた。
「あらあら、ゲームでムキになるなんて大人気ない。
嫌よねぇ瑞希ちゃん。
じゃあ、そろそろ休憩してマンゴーでも食べましょうかね」
おばさんは台所に戻っていった。
「おばさん、手伝います」
「瑞希ちゃん、ありがとう」
「娘はいいもんだなぁ。
息子と違って、花がある」
「このエロ親父」
大ちゃんとおじさんがまだ言い争っている。
このやり取りも昔からの事で、思わず笑みが漏れる。