{霧の中の恋人}
「いやぁ、でも本当に残念だ。
孫の顔を見られるのも時間の問題だと思ったんだがなぁ。
学生結婚。
できちゃった婚。
瑞希ちゃんが相手なら俺は許すぞ!
大地、頑張れよ!」
しんみりとした空気を吹き飛ばすように、おじさんが茶化すように言った。
結婚?
できちゃった婚!?
顔が熱くなる。
「…こんの、エロ親父!!」
大ちゃんが叫んだ。
「お父さん、嫌だわ。
瑞希ちゃんは大切な娘なのよ。
ちゃんと順序を踏んでからじゃないと許しませんよ。
大地、ちゃんとプロポーズの言葉は考えているの?」
おばさんがそれに乗る。
プロポーズ!?
ますます顔があつくなる。
隣にいる大ちゃんの顔をチラリと窺うと、大ちゃんと目が合い、慌てて目を逸らした。
「あら、見つめ合ってお互い照れているようじゃ、結婚はまだ先みたいね」
「大地、そんなんじゃイカンぞ!
父さんが若い頃はな、母さんを口説くために……」
「もう!2人共!
いい加減にしろ!!」
大ちゃんが叫んで2人を止めた。
「フフフ…」
私は思わず笑った。
さっきまで泣きそうだったのに、今じゃもう明るい気分になっている。
本当に、ありがとうございます。
私は心の中で、おじさんとおばさんにお礼を言った。
「大ちゃん。
私、結婚式は神前じゃなくて、教会がいいなぁ」
「おっ、じゃあ瑞希ちゃんとバージンロード歩けるな」
私が冗談にのると、おじさんが嬉しそうに笑った。