{霧の中の恋人}
「瑞希ちゃんのウエディング姿、きっと可愛いわね」
おばさんが、うっとりと手を合わせる。
「あなた、新婚旅行はハワイがいいわ」
私がふざけて大ちゃんに言うと、大ちゃんは益々顔を赤くして、プイッとそっぽを向いた。
拗ねたときと、照れたとき
顔を背けるクセは、おじさんとそっくりだね。
私は可笑しくなって、くすくす笑った。
「…もう!
瑞希!お前もう帰れ!」
とうとう怒りだした大ちゃん。
「はーい、じゃあそろそろお暇します」
私はそう言って立ち上がる。
「あらあら、大地。
将来のお嫁さんをちゃんと送っていくのよ」
「送ってくよ!!」
大ちゃんがやけくそのように叫んで一緒に立ち上がった。
「瑞希ちゃん、引越しの前にもう一度顔を見せに来るんだよ」
「引っ越しても遊びにいらっしゃいね」
玄関先まで見送りに来てくれたおじさんとおばさん。
「はい!ありがとうございます」
私は手を振りながら応えた。
本当にありがとう─…。
それから…
嘘を吐いて、ごめんなさい──…。
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