{霧の中の恋人}
「それに、こんなに夜遅くにコソコソ引越しって、夜逃げじゃないんだから!」
「うるさいな。
口を動かす前に手を動かせ。
こんなんじゃ、日が変わるぞ」
しれっと言う久木さん。
「だったら、昼間にすればよかったじゃないですか!
なんで夜なんですか?
夜に引越しって聞いたことないんですけど!」
「………」
私の訴えに、何も言わない久木さん。
返ってきたのは、溜め息だけだった。
ほんっとに、腹立つ!!
こっちがどんな思いで引っ越すなんて知らないくせに!!
今からでも、引越しやめるって出来ないかしら…。
私は本気で後悔をし始めていた…。