{霧の中の恋人}

穏やかな日曜の朝─


私は目覚めて、カーテンをいっぱいに開ける。

刺すような夏の強い日差しも治まり、空も随分と高くなった。

窓を開けると、秋の風がわたしの髪をそっと揺らしていく。


さすがに高層マンションの最上階からの眺めはいいな…。


街全体を眺望でき、空もうんと近くに感じる。


私はキッチンに行き、コーヒーメーカーの電源を入れ、トースターに食パンをセットする。

そして、目玉焼きとサラダを手早く作る。


この広いキッチンと、窓の眺めだけは私のお気に入りになった。



マグカップに口をつけながら、物音ひとつしない部屋のドアを眺める。


まだ寝てるのかな?
それとも部屋にはいないのかも…。



久木さんと暮らし始めて、一週間が経った。


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