{霧の中の恋人}
「私、あの家を引っ越したんです」
涼子さんに引越しの報告をすると、涼子さんはとても驚いていた。
「え!いつの間に!?
じゃあ1人で暮らしているの?」
「…えーっと…」
私が言い淀んでいると、涼子さんは何か思いついたように手を叩いた。
「まさか!大ちゃんと同棲することにしたの!?」
「え!同棲!?」
お母さんと仲が良かった涼子さんは、私の幼馴染の大ちゃんのこともよく知っている。
ちなみに、私が大ちゃんに恋愛感情を持っていることも知っている。
知っているというか、バレてしまった。
「ついにそういう仲になったのね!」
どうしよう…。
涼子さん、完璧誤解しちゃってる。
私と大ちゃんが同棲なんて有り得ないよ。
それに、ついに…って何!?