{霧の中の恋人}
俊輔くんは昔から大人びていて、発言もおよそ子供らしくなかった。
最近、ますます歳相応という言葉から掛け離れてきたように思う。
長身の涼子さんに似たのか身長も伸び始めて、今じゃ私が見上げるくらいにまでなった。
声だって、男性特有の低い声になった。
昔は小さくて、フワフワの髪の毛を揺らしながら「瑞希お姉ちゃん」なんて天使のような笑顔で笑っていた時もあったのに…!
「俊輔くん、生意気になった!」
「本当のことを言い当てられてムキになるなんて大人げないよ、瑞希さん。
それより早く次渡してよ。
瑞希さんが花組んでくれないと作業が進まないよ」
早く渡せとばかりに、俊輔くんは手の平をヒラヒラと上下に揺らした。
…ホント、生意気!!
私は、いつの間には大きくなっていた俊輔くんの手の平を、思い切り叩いた─。
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