{霧の中の恋人}

久木さんは眉間に皺をよせて、ジロリと私を睨む。


「自分の家でどんな格好をしていても君には関係ないだろう。
風呂あがりで、すぐに服なんて着たくない」


よく見れば、濡れた頭からポタポタと雫が垂れている。


久木さんは首からかけられたタオルで乱暴にガシガシと頭を拭いて、冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターを一気飲みしている。


タオルで無造作に乱れた髪の毛。

白い肌を滑り落ちていく雫。

水を飲む度に、上下に動く喉仏。

均等のとれた、しなやかな身体。


なんて綺麗なんだろう…。

写真に収めたくなるほどに、その姿は綺麗だった。



…って、私は変態か!

我に返り、恥ずかしさが込み上げる。


「た、確かに久木さんの家ですけど、私も一緒に暮らしているんです!
女性がいるのに、その格好は配慮にかけていると思います!」


恥ずかしさを振り切るように、私は叫んだ。

しかし、久木さんはチラリと私を一瞥し、フンと鼻で笑う。



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