{霧の中の恋人}
「おーい、大地ぃ。
コートでいちゃいちゃすんなよー」
ふいにかけられた声に、私はパッと指を離した。
気がつけば、大ちゃんの後ろに人がワラワラ集まっていた。
「イチャイチャなんてしてねーだろ!」
「いーや、してた。
彼女がいない俺への当てつけかぁ?」
「でも、大地って彼女いないって言ってなかったか?
じゃあ、この子誰だよ?」
「あ!もしかして、噂の子じゃねーか?」
フットサルサークルの人達が金網に張り付くようにして並び、私に視線が集中する。
たくさんの視線にたじろいで、私は思わず一歩後ろに下がる。
それに、『噂の子』って何?
「あー!それだ!」
メンバーの1人が私を指さす。
「「大地の姫!」」
一斉に声が揃った。