{霧の中の恋人}

「大地…の姫…?」

姫ってなに?


メンバーの人をキョロキョロ見渡しても、誰も私の疑問に答えてくれる人はおらず

「あー、そうだ。この子だろー」

「この子がそうかー」

「そういえばこの間、大地と学食で話してたなー」

なんて口々に話し合っている。


一体、何なんだろう。

姫って、なに?


訴えかけるように大ちゃんに視線を向けると、大ちゃんはフイっと顔を背ける。


「うるせぇな!
もうお前ら散れ!!」


大ちゃんは、シッシッと手を払って、追い払う仕草をする。


「せっかく噂の彼女に会えたんだから紹介ぐらいしろよー!」


1人が、大ちゃんの肩に腕をまわした。


「ああ!もう!
離れろよ暑苦しい!」

「紹介してくれるまで離さなーい♪」

「観念しなさーい♪」


大ちゃんを取り囲むようにして人が集まり、じゃれ合っている。



私は、完全に蚊帳の外。

どうしたらいいんだろう…。


どう反応していいか途方に暮れてると、メンバーの1人が私に近づいてきた。


「ごめんね、うるさい奴らで。
これじゃあ、君も訳が分からなくて困るよね」


他の人より落ち着いた話し方で、その人は話しかけてくれた。



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