{霧の中の恋人}
「なに余計なこと言ってんすか部長!」
いつの間にか皆の輪から外れた大ちゃんが、すぐ後ろに立っていた。
話をしてくれた人は、部長さんだったんだ。
「おや、事実を話しただけだろう?」
部長さんがシレっと言う。
「それが余計な事だって言ってるんすよ!」
「余計なことでもないだろう。
説明もなくて、彼女が困っていたからね。
それとも照れてるのか?」
「照れてません!」
「ムキになるところが余計に怪しいね」
部長さんは腕を組んで、クスクス笑った。
大ちゃんは頭をガシガシ掻いて、それっきり何も言わなくなった。
大ちゃんが言い負かされてる…。
部長さんには勝てないんだ。
ちょっと可笑しい。
「そうだ!」
部長さんが、何かを思いついたように手を叩いた。