{霧の中の恋人}
「ひでぇ!水原部長まで!」
井本さんが、ヘラをぶんぶん振る。
「ほら、瑞希食えよ。
みんなよく食う奴ばかりだから、あっという間になくなるぞ」
私の右隣に座る大ちゃんが、私のお皿にお好み焼きを乗せてくれた。
「大ちゃん、ありがとう」
「お前、鈍くさいからなー。
ボーッとしてて食いっぱぐれるなよー」
俊輔くんや久木さんに続き、大ちゃんまで皮肉を言うの!?
もう!!
割り箸を勢いよく割って、お好み焼きに手をつけようとすると、隣からひょいっとエビが落ちてきた。
「瑞希の好きなエビが入ってた」
大ちゃんが私のお皿に、好物のエビをのせてくれた。
俊輔くんや、久木さんとは違う。
やっぱり大ちゃんは皮肉をいっても、優しさで溢れてる。
「大ちゃん、ありがとう!」
私がにっこり笑ってお礼を言うと、大ちゃんはそっけなく「別に…」と呟いた。