{霧の中の恋人}
こういう時、何て返したらいいのかな。
お礼を言うのも変だし。
否定するのもどうかと思うし…。
対応に困っている私に、大ちゃんは助け舟を出してくれた。
「あんまりコイツをからかうなよ」
大ちゃんが、守るように私の前に腕を伸ばしながら言った。
「おお、王子の登場です!」
「姫をからかうのは、俺だけの特権…ってやつぅ?」
「もーホント、お前らどっか行け!!」
大ちゃんは遠藤さんと井本さんの席まで回りこみ、首を絞めたりプロレス技をかけたりする。
「ギャー!大地ギブ!」
「暴力をふるう王子反対!」
お店の座敷でふざけ合う様子を、私は笑いながら見ていた。
何だかんだ言ってても、大ちゃん楽しそう。
その後、リクエストがあって、私と大ちゃんの幼い頃の話をみんなに話した。
その度にからかわれたり、突っ込まれたりした。
メンバーの人は、皆いい人ばかりで、楽しい時間を過ごすことができた。
大ちゃん、いい人達に囲まれて、幸せ者だね。
大ちゃんが、サークルでどんな人達と、どんな風にして過ごしているのか分かったみたいで嬉しかった。
好きな人のことを知るって、幸せな気持ちになれる。
もっともっと知りたいって思う。
どんな事でも些細なことでも。
それが例え、その人の嫌なところでも。
だって知る度に、その人に近づけたような気がするから───。