{霧の中の恋人}
お好み焼き屋でみんなと別れたあと、大学に戻った私は、泉とバッタリ会った。
「瑞希?何かあったの?元気がないみたいだけど…」
心配そうに顔を覗きこむ泉に、お昼にあった出来事をすべて話した。
「よーし、今日はとことん話を聞いてあげる!
瑞希!今日バイトないんでしょ?
夜になったら居酒屋に行こうよ!」
という流れがあって、泉と居酒屋に行って、落ち込む私を、泉は慰めてくれた。
話がヒートアップする内に、お酒も進んだ。
こんなにお酒を飲んだのは初めてだったと思う。
それだけ、大ちゃんの言葉はショックだった。
『アイツをそういう風に見たことは一度だってねぇよ』
『瑞希は、ただの幼馴染だよ』
また大ちゃんの言葉を思い出し、目にジワリと涙が浮かぶ。
分かっていた。
自分を妹のようにしか思っていないって。
でも、本人の口から聞いたのは、初めてだった。
やっぱりそういう風に思っていたんだ…。
目に浮かんだ涙は、やがて大きな粒となり、目からこぼれ落ちた。