{霧の中の恋人}

「…それと…」

まだ『探偵俊介』の推理は続くらしい。


「昨日、泣いたんでしょ?
目が腫れてる」


俊介くん上目づかいで、私をチラリと見る。

私は咄嗟に目を隠した。


『探偵俊介』の前では、目の腫れを必死で冷やしたり温めたり、メイクで隠そうとした苦労は報われなかったようだ。


「やけ酒の理由は大地さんだね。
ふられてヤケ酒?」


当たらずとも遠からず。

さすがに鋭いところを突いてくる。



「…まだ…ふられた訳じゃないと思うけど…」


直接、面と向かってふられた訳じゃないけど、本人の口から聞いたのだからフラれたも同然だよね…。


俊介くんはようやく本から顔をあげ、パタンと本を閉じた。


「瑞希さんは思い込みが激しいところがあるよね。
すぐ早とちりするし」


いきなり何を言い出すのだろう。

私の勘違いって言いたいの?


「…思い込みなんかじゃないよ…。
だって、大ちゃん本人が言ってたの聞いたんだもの…」


口に出すとますます悲しくなって、だんだん声が小さくなってしまう。

俊介くんは一つ、溜息をついた。


「……父さんと母さんが離婚したとき、本当に突然のことだった…」


俊介くんが突然、ポツリと語りだした。


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