{霧の中の恋人}
瞳の奥に隠された熱情
バイトが終わり、自宅に帰ってきた。
今日は仕事にならなかったな…。
二日酔いの体で、俊介くんが意味深なこと言うから色々考えちゃって…。
もっとしっかりしないと。
マンションの部屋の前に着いて、カードキーを差し込もうとした手を止める。
そうだ…。
昨日、酔っ払っちゃって、久木さんにあられのない姿をまた晒しちゃったんだっけ…。
酔っ払っただけならまだしも、吐いた姿を見られて、それを久木さんに……。
ギャー!もう顔合わせられないよ!!
昨日はお酒が残っていたから、気が大きくなっていたというか、正常な判断が出来なかったというか…。
シラフだったら、意識が戻った時点で逃げ出してたよ。
女の子が男性に吐いた姿なんて絶対見せたくないよね。
それも、あんなカッコイイ人になんて尚更。
もう立ち直れないかも…。
玄関の鉄のドアに顔をつけると、火照った頬が冷やされて気持ちがいい。
やっぱり合わせる顔がないよ。
今日は泉の家にでも泊めてもらおう…。
ドアから体を離して、方向転換しようとしたとき、私を見つめる不思議そうな眼差しがあった。
「瑞希ちゃん、何してんの?」