{霧の中の恋人}
「で?何しに来た?」
リビングのソファーに真向かいに座る久木さんと、不知火さん。
久木さんは長い足を組み、不機嫌そうな表情で不知火さんを見据えている。
「何しにって、友達に言うセリフじゃないだろー。
遊びに来たに決まってんじゃーん」
「帰れ」
「そんなに照れんなって。
俺に会えて嬉しいのは分かるけどさー」
「来てくれなんて頼んだ覚えはない」
「もう、ホント。
シランちゃんってば天の邪鬼ー」
「帰れ」
プッ。
2人の会話を聞いてると面白い。
噛み合っていないようで、息ピッタリのコントのようなやり取り。
笑い出したいのを堪えているのがバレてしまったようで、久木さんにジロりと睨まれてしまった。