{霧の中の恋人}

「まあ、遊びに来たっていうのも本当だけど、あれからどんな生活を送っているのか心配で様子を見にきたってとこかなー」


「余計なお世話だ」


「まあまあ、そう仰らずに。
ちゃんと差し入れも持ってきたからさー」


不知火さんは窘めるように、傍らに置いていたビニール袋を取り出した。


「ほい、弁当。
サラダつきね。
どうせろくなモン食ってないんだろーと思って」


ビニール袋の中から出てきたのはコンビニのお弁当だった。

コンビニの食事がろくなものに分類されるのかは疑問だけど、いつもの久木さんの食生活を考えると、コンビニのお弁当でも豪華な食事になるに違いない。


冷蔵庫の中身を思い出し、私はそう予測した。


「……まあ、食ってやらないこともない」


久木さんはボソリと呟き、目の前に出されたコンビニのお弁当を食べ始めた。


ほんと天の邪鬼というか、素直じゃないというか…。

どうしてここで素直にお礼が言えないんだろう。



リビングで向かいあってボソボソとお弁当を食べている2人に、キッチンでお茶でも淹れてあげようと、私は腰をあげた。







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