{霧の中の恋人}
「ちょっ!なになに!?
ソレどういうこと!?」
不知火さんは興味津津と、身を乗り出した。
「昨夜は散々な目に合った。
酔ったコイツは俺に……」
「ギャー!それは言わないで下さい!!」
私が話の続きを全力で阻止すると、久木さんは私のほうをチラリと見て、溜息をついた。
「つまり女性らしかぬことをしているという事だ」
まあ、確かにそうだけど…。
その言い方って、ますます不知火さんの誤解を生むんじゃ…。
不知火さんの顔を恐る恐るうかがうと、
「ヘー、瑞希ちゃんがねー。意外だなー。へー」
なんて納得しながらニヤニヤ顔。
やっぱり誤解しちゃってるよ!
誤解は解きたいけど、真実を伝えるのはもっと嫌だ。
久木さんは気付いていないのか、涼しい顔で冷めたお茶を啜っている。
結局、不知火さんは
「俺、邪魔だよね?そろそろ帰るわー」
なんて要らぬ気を使って、誤解したまま帰って行った。
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