{霧の中の恋人}
祈りは届かなかった。
大学の中で偶然、大ちゃんに会えることなんて滅多になかったのに、会いたくないと思っている時にあっさりと会えちゃうなんて…。
「食わないのか?」
「…食べるよ」
大ちゃんに誘われて学食で食事をとることになった。
大ちゃんの顔を見るとあの言葉が蘇ってくるから、私は俯いてただひたすら目の前のスパゲッティを食べることに没頭することにした。
「一昨日は無理やり悪かったな。
うるさい奴らだっただろ」
「ううん、そんなことないよ」
「でもあの店のお好み焼き美味かっただろ?」
「…うん、そうだね」
「うちのお袋とオヤジが瑞希を連れてこいって五月蝿いんだけど、たまには遊びにこいよー」
「…うん、わかった。
そのうちまたお邪魔させてもらうね」
「……何かあったのか?」
「…え?」
思わず顔をあげると、悲しそうな表情を浮かべた大ちゃんの顔があった。