KISS OF LIFE
「天然関係なしに、知らないのも同然か」

東雲主任が短く息を吐いた。

「我が社の敏腕交渉人、森藤勇(モリフジイサミ)」

「敏腕…?」

そんなにすごい人なんですか?

東雲主任はあたしの気持ちがわかったらしく、
「最強だよ、あいつは」
と、言った。

「狡猾、時に巧妙な手口で相手をうなずかせる。

例えるとするなら、蜘蛛だな」

「蜘蛛?」

「先に罠を仕掛けておいて、その中に相手を誘い込む――まさに、蜘蛛」

だから、蜘蛛男なのか。

「あいつの罠、気をつけた方が身のためだな」

「えっ?」

「1度かかったら出られないんだよ、蜘蛛の罠は」

「ふーん…」

だから、気をつけろか。

「東雲主任」

淳平がうっとうしいくらいのブラックオーラを背負って、あたしたちのところに戻ってきた。
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