KISS OF LIFE

交渉人は甘くささやく

あの課長、表は紳士的なイケメン課長で通ってるけど、裏はSなブラックヤローだ。

って言うか、耳にキスする人がいますか!?

「最ッ低」

あたしは守るように耳を押さえると、休憩所に足を向かわせた。

「あっ…」

目があった瞬間、声が出た。

「森藤、勇…」

先ほど会った、美貌の交渉人・森藤勇だ。

「知ってるの?」

眼鏡の奥の微笑みに、ノックアウトも同然だ。

「東雲主任に聞きました」

「東雲主任…ああ、なるほどね」

森藤さんは缶コーヒーを口に含んだ。

「君は、東雲のものか」

「そうです」

「ふーん、そうか」

独り言みたいに呟くと、森藤さんは缶コーヒーをゴミ箱に入れた。

「となると、南野のものでもあるんだね」

「えっ…ああ、はい」

ずっと呼び捨てで呼んでたから、名字を忘れていた。
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