KISS OF LIFE
「初めまして」

お父さんに動じず、淳平は頭を下げた。

この人、めっちゃすごいわ…。

「彩花さんとおつきあいをさせております、南野淳平です」

「南野…?」

ピクリと、お父さんの片方の眉が動いた。

何かマズいことを言っちゃった?

自己紹介しただけなのに?

淳平は頭をあげて、真っ直ぐとお父さんを見つめた。

動じてないってのが、ある意味すごい。

もはや最強…。

そんなあたしをよそに、これでもかって言いたいくらいの沈黙が包んだ。

いきなり、「娘は渡さん!」みたいなことを言わないでよ。

いっぺん言われてみたいセリフだけど、さすがに場に遭遇したら…。

あたしはヒヤヒヤだ。

躰から水分が抜けてしまったのかと思うくらい、喉はカラカラだ。

けど水が欲しいなんて、場を壊すような抜かしたセリフを言っている場合じゃない。

何か言うように、お父さんが唇を開いた。

「君が南野くんか?」
< 137 / 152 >

この作品をシェア

pagetop