KISS OF LIFE
「飲んでなければ、それでよろしい」

男前はフフッと笑うと、あたしの前を去った。

な、何ですか?

って言うか、どゆこと?

「変な人」

携帯電話片手に、あたしは呟いた。

そして、ふと思う。

「あ、会社遅刻するわ」

携帯電話をカバンにしまうと、駅を後にした。


「おはよー」

出社したあたしを迎えてくれたのは、すでに仕事を始めていた新垣七海(アラガキナナミ)だ。

彼女は数少ない同期生の中のあたしの親友だ。

「ねえねえ、聞いて!

五十嵐さんがすっごいかっこよくてさー」

あたしは早速七海に今朝見たばかりのケータイ小説の話をした。

「んもー、またその話?」

あたしを見て、七海が呆れたように言った。

けど、聞いてくれるみたいだ。

「強引なところはあるんだけど、決める時はバシッと決めるのよ〜」

話をしている時のあたしは完ッ全に乙女モードだ。
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