KISS OF LIFE
「南野課長、堺をお借りしましたよ」

缶コーヒーをゴミ箱に捨てると、東雲主任は言った。

休憩所を離れようとする東雲主任に、
「どこへ行かれるのですか?」

南野課長が聞いた。

「ちょっと外に、これから飼い猫が忘れ物を届けにくるもんですから」

東雲主任はニタリと眼鏡の奥で笑うと、休憩所を離れた。

東雲主任は謎の人物。

と言うか、飼い猫って…。

「東雲主任の猫ちゃん、かわいいんですかね?」

未だにブラックオーラが全開の南野課長にあたしは話しかけた。

「さあ、それはどうだか」

えっと…ますますブラックオーラが濃くなったように見えたのは、あたしだけでしょうか?

「彩花、東雲主任と何を話していたの?」

南野課長が聞いた。

「…仕事の、話です」

「それだけ?」

「はい…」

これ…ある意味、拷問だよね?

あたしはそう思った。
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