KISS OF LIFE
その捨てられた子犬のような顔、反則なんですけど…。

世の中の女性たちに見せたら、みんな南野課長に飛びつくよ。

南野課長の方が、あたしよりも無防備過ぎじゃない。

「うん…」

あたしは首を縦に振ってうなずいた。

「だったら、自覚を持ってくれ」

そう言うと、南野課長はネックレスをとった。

「つけてあげる」

チェーンの冷たい感触が、あたしの首に触れた。

南野課長の熱い指先も、首に触れる。

「似合ってる」

指先が離れたのと同時に、南野課長が微笑んだ。

「すっごく、似合ってる」

あまりにも見つめるから、あたしは目をそらすようにうつむいた。

「彩花?」

指があごをつかんだと思ったら、顔をあげさせられた。

「課長、ごめんなさい…」

呟くような小さな声で、あたしは言った。

「勘違いしたり、殴ったりして…」

「彩花に殴られたのは、相当痛かったよ」

そう言った南野課長に、あたしは小さくなった。
< 65 / 152 >

この作品をシェア

pagetop