KISS OF LIFE
誰よ、もう〜。

頭を押さえて振り返ると、
「あ、東雲主任」

書類片手に立っている東雲主任がいた。

「さっきから名前を呼んでたんだけどねえ」

東雲主任が呆れたように言った。

「…す、すみません」

あたし、小さくなって謝った。

「バツとしてこの書類、南野課長に届けてやってくれないか?」

あたしの前に書類を差し出すと、東雲主任が言った。

「課長にですか?」

「そ、今日大事なプレゼンがあるのに忘れて行きやがった」

「わかりました、届けます」

あたしは東雲主任の手から書類を受け取った。

「じゃ、行き違いにならないようにね」

ニタリと、眼鏡の奥で東雲主任が笑った。

……ううっ、危険人物だ。

「えっと…東雲主任の飼い猫ちゃん、お元気ですか?」

「うん?

元気だよ、やり過ぎて今日も腰を痛めていると思うよ」

んふっと、東雲主任はやらしく笑った。
< 69 / 152 >

この作品をシェア

pagetop