KISS OF LIFE
「えっと…言わないでくださいよ?」

「んっ、何を?」

何をって、あんた…。

東雲主任って、意外にも天然キャラなんですか?

「まあ、言わないから大丈夫だよ。

部下たちの社内恋愛を邪魔するほど、俺は悪魔じゃない」

「あー、そうですよね…」

何か、東雲主任ってゆるキャラかも。

「それに、お互い仕事に悪影響はないみたいだし」

東雲主任はチラッとあたしを見た。

「な、何ですか?」

いきなり見られたあたしは戸惑った。

「ただ、嵐には注意かな」

東雲主任が言った。

「あ、嵐?」

あたしは思わず聞き返した。

「あまりにも幸せ過ぎると、嵐がくるかもよ?」

ニヤッと、東雲主任は眼鏡の奥で笑った。

「ま、まさかー」

あたしは笑って言い返した。

この時ばかりは東雲主任のジョーダンで済んだんだけど、まさか彼の言う通りの嵐がくることに、あたしはまだ気づいていなかった。
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