弱者
障害者と名乗る男
栗原麻美は、バイトの面接に行くために夕方5時少し前に家を出た。
近所の駅まで5分の距離を早足で歩くと、ワンレングスに整えたショートヘアの内側にじっとりと汗が滲んだ。
今年の夏の尋常でない暑さによって、体調があまり良くない。
前のバイト先の定食屋では、二度も貧血を起こし、優しかったはずの店長からは遠回しにクビを告げられた。
財布の中の財産は五千円をきっていた。