弱者
勇敢な医師

『ですからね、大西さん? 旦那さんをここに連れて来なさいよ。』

大西美和子は蒼く頬のこけた顔を左右に振る。

「でも・・・ 病院に行こうと言えば、また暴れるかもしれない。 それにここは心療内科でもないのに、ご迷惑ですわ。」

ふーっと、町村医師は微笑む。

『安心してください。 僕はね、内科医でありながらも心理学について長いこと勉強してきています。 心療については誰にも負けない自信があります。』

町村医師の自信は全く根拠のない物ではなかった。

現に、美和子が新宿の住宅街にある小さな病院の傍から千葉の市川へ引っ越したにも関わらず、わざわざこの病院へ来るのも町村医師のカウンセリングと処方により、長年悩み続けてきたパニック障害が完治したことがあった。

夫の健一が、もし変わるとすれば、それができるのはこの町村医師しかいないと思っている。

「じゃあ・・・ なんとかここへ連れて来ます・・・ 」




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