弱者

約束の期日を守らない酒井に、何度となく電話をした。

『すみません・・・今、どうにもならなくて・・・・・必ずお金は返しますから、もう少しだけ待ってください・・』

一度は憧れたはずの酒井のみっともない姿。

その人柄を信頼して、店のリニューアル云々は諦めてもいいとしても、金が戻ることだけは期待していた。


しかし、繋がらない酒井の携帯・・・

〔借用書〕と汚い字で書かれた紙切れだけが、虚しく残った。

後に、麻美以外にも沢山の被害者がいたことを知った。


(弱ったフリしして人の善意を踏みにじるなんて・・・ 最低。)


麻美は二度と騙されるものかと気を引き締めるようにしていた。



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