弱者

麻美の鼓動は早くなり、どうにもならない。

男の視線と息遣い・・・ それから妙な臭い・・・

髪の毛を燃やしたような、鼻につんとくる悪臭。

男が息を吐く度に、息を止めた。


(ああ・・・ 席を立った方がよかったのかな・・・ 怖いよ、怖い・・・ )


麻美は男の顔へ目を上げると、申し訳なさそうに言った。


『あの・・・ 私、妊娠してるんですよ、すみません。 』


大嘘だ。




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