おろし
怪徴の章
夜中、あるマンションの壁に、虫のようにへばりつく、シミーズ姿の若い女のような者がいた。

それは、ラルクのライブの帰りだった。
最高のライブだったはずなのに、その者を見た瞬間、わたしの意識が・・・
全てが消し飛ぶ---------------------------。


シミーズの女の髪は長く濡れていて、べっとりとシミーズに絡み付いている。
その濡れたシミーズに、貼り付く透けた肌は、何か、どことなく紫がかっていた。
その女は、マンションの壁(側面)をまるでゴキブリのように、よじ登っていた。
そして、その姿はマンションの最上階付近の壁で、フッと消えた。

そう、まるで煙が吸い込まれるように・・・
壁の隙間に吸い込まれたのだ・・・

『あれは・・・わたしの部屋だ・・・』

 気がつくとラルクのライブ会場にいた。
周囲(まわり)のみんなは、とりつかれたように、歌に発狂している。
わたしは取り残されたように、いや、空白の時をなぞるかのように、
まだ意識が朦朧としていた。

『あの女はいったいなんだったんだ・・・』

わたしのマンションの部屋に吸い込まれていったシミーズの女・・・

!? あれ、なんでわたしはそんなことを・・・

矛盾がおこる。

夢でも見てたのか?
最近ようやく風邪も治りかけてきたのだが、
まだ、疲れがたまっているのだろうか・・・


しかし、こんなに交感神経が活発になるライブで、眠りに入れるものなのか?
そんなバカな・・・
まさか、『眠りによせて』で、寝てしまったなんてことはないだろう。(笑)


ん?・・なんだ・・この盛り上がり方は・・・
え?この曲はさっき・・・さっき聞いたはず・・・
アンコールか?
いや違う・・・
アンコールじゃない・・・

こっ、これは・・・

バチバチ・・・

蛍光灯がちらつく・・・

・・・・・・・・・・・・・・。

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